19.柳川→大牟田 近代遺産を巡って
2008/11/15
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いつもの職場の後輩とサイクリング。今回は柳川から大牟田までを、産業遺産を訪ねながら走ることにした。特に大牟田・荒尾は炭鉱で栄えた土地である。石炭から石油へエネルギー資源の需要が移ることにより、繁栄から衰退の一途をたどった明暗の痕跡が今も町の各所に遺されている。前から見てまわりたいと思っていたのだった。 ちなみに後輩二人は、I君が柳川出身、U君が大牟田出身である。今回は私の趣味にかなり偏ったコースっぽく思えるのだが、別に職場の権限を行使したりとかそんなのではない。くれぐれも誤解のないように。 当日の朝、天神の警固公園にて自転車を輪行袋につめこむ。そして西鉄電車に乗りこみ、柳川駅で下車する。車ではなく、あえてこういう移動方法もたまにするとおもしろい。 |
| 風情のある川下りを横目にみながら柳川の街中を走っていると、まっ白い洋館が目に入った。「柳川御花」という旧柳川藩主立花家の別邸だ。大正時代に建てられた洋館の裏手には、江戸時代の屋敷や、明治に造られた「松濤園」という名勝の庭園があるらしいのだが、今回は先を急ぐために入口の付近を眺めて次へ移動することにした。 |
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またふと目に入った物があったので、一時停止する。鉄柱で補強しているが、今にも壊れそうな木造の橋だ。丸太をざっくり繋げた武骨さが、なかなか味わいがあって良いではないか。 果たして保全してゆくつもりなのだろうか。壊れたらそれっきりで消滅してしまうような気がする。そうならないように願う。 |
| 有明海の潮風を浴びながら走る。潮が引けば広大な干潟が現れるのだが、今は満潮のため穏やかな海面を時折元気よく魚が飛び跳ねていた。日も差してきて、最高に気持ち良い。しかしこの天気が急変するとは、この時は思ってもみなかった。 | ![]() |
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急に空が曇って来た。予報で曇りとは言っていたが、時々ぽつんと肌で雨粒を感じた。降水確率はそれ程高くはなかったので3人とも雨具は持ってきていない。 不安を感じながら湾岸の道を走ってたどり着いたのは「旧有明鉱跡」。中は立ち入り禁止になっていたので、ゲートから彼方に寂しく佇む2対の櫓(やぐら)を眺めた。周りにあった建物は既に取り壊されており、荒涼とした平地に櫓だけが取り残されている。まるで恐竜の化石のような姿に、近代日本の発展を担った華々しさは面影すらない。 |
| 大牟田の市街地に着いた。小雨が降ったりやんだりと微妙な天候具合。とりあえず残りのチェックポイントを急いで巡り、U君のご実家に寄らせてもらうことにした。 市街地のすぐ近くに風格のある建物が存在する。炭鉱発展の全盛期に建てられた「三井港倶楽部」で、現在はレストランとして営業している。 かつては三井財閥の迎賓館として皇族をも迎い入れてきたという。繁栄の象徴を今に伝える、歴史的価値のある建物だ。 |
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三井港倶楽部のすぐ裏に、「三川鉱跡」がある。戦後最大の炭じん大爆発が起きた現場である。気品ある建物と廃墟は、まさに栄枯盛衰の光と影。当時よりはるかに巨大な経済国家として発展した我が国に生きる者として、この固く閉ざされた門が語るメッセージを受け止めなければならないと思った。 |
| 雨が本格的に降り始めた。次のポイントまで行くのが精一杯だろう。急ごうと思った矢先、突然甲高い破裂音が! 何の音か一瞬わからず、とにかくビックリ。自転車を降りると、前輪のタイヤが破裂していた。急な下り坂とかでなく良かった。 シトシト降る雨の中、予備のチューブに交換してとりあえず応急処置完了。先を急ごう。 |
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炭鉱による発展は、三池港なくして存在しえない。日本最大級の干満差がある有明海に面した港において、石炭を運搬するための大型船を干潮時に停泊させるためには安定した水位を維持させる工夫が必要になる。そのための堰が「三池港閘門」である。スルーゲートに並ぶ歯車を柵越しに眺めることができる。現在も稼働して、船の往来を助けているのだ。 |
| 雨に追い立てたれるようにU君のご実家に一時避難させてもらうことにした。少し休憩したら車でもう一つの炭鉱跡を周り、食事をして駅まで送ってもらうつもりだった。 U君のお父さんからビールをすすめていただいた。体を動かした後の冷えたビールは、当然のように格別なうまさだった。そして間髪入れずに熱燗が出てきた。辛すぎず甘すぎず、舌の上で転がすとふくよかな味わいが広がる。やばい。美味しい!。U君は運転が控えているので、私とI君とお父さんの三人で、酒宴が始まる。 お父さんは酒をすすめるのがお上手。加えてお母さんの燗をつける手際も良くて、すごい早さでトックリがローテーションされてゆく。私は超ご機嫌モードで、お父さんと和気あいあいと話していたような気がする。楽しかったということだけ覚えているが、内容は断片的にしか記憶に残っていない。 そして2時間後・・・・・すべてが終わった。私とI君 撃沈。 写真を撮られていることに、当然全く気付いていない。枕もとの洗面器が何のためにあるかは、あえて語るまでもないだろう。 |
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結局成り行きで一泊。U君のご家族には本当にお世話になってしまいました。ありがとうございました。 さてU君の車に自転車を積んで、昨日行きそびれた国指定重要文化財に指定されている「万田鉱跡」へ向かう。赤さびた櫓とレンガ作りの建物は、目の前に静止画のように存在している。しかしそれは空想映画の一コマではなく、かつて夢と希望抱いていた人々の生活があり、またそれは終焉を迎えたことを忘れてはならない。 |