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幻の大陸 八重干瀬


2004年5月1〜5日



宮古島へ

次々に青い海に飛び込む子供達(パイナガマビーチ
 宮古島の北部にある池間島から、さらに数キロ沖合いに八重干瀬(ヤエビセ、ヤエビシ、ヤビジなどといろいろな呼び名があります)という大きなサンゴ礁群落があります。私はまだ写真でしか見たことがありません。噂では世界で最も美しいサンゴ礁だそうです。インターネットのサイトなどで情報を収集すればするほど、ますます実際に自分の目でみたくなりました。そんなわけで意を決してゴールデンウィークについに宮古島へ飛ぶことに決めたのです。




八重干瀬に上陸よりは・・・

魚垣と呼ばれる珍しい漁の仕掛け(下地島)
 八重干瀬は潮が引いた時、海上に島のように姿を現すので、「幻の大陸」と呼ばれています。そこには八重干瀬祭りの時だけ上陸が許されます。限られた時だけの上陸とはいえ、人が踏み歩くことによるサンゴの破壊が危惧されています。しかし、祭りは伝統的な神事でありますし、地元にとっては貴重な観光収益源でもあるということで、簡単に上陸中止というわけにはいかないようです。そのため現在、関係者の間でサンゴ保護のためのガイドラインが検討されているそうです。
 さて海に行けばシュノーケルで潜るのを常とするカッパの私。サンゴは水中で見た方が美しいと思いますし、やっぱり生きてるサンゴや生き物をパリパリ踏んでしまうのは気持ちよくありません。そこでいろいろ探してみると、サンゴに直接触れずに観察できるシュノケーリングツアーは結構ありましたので、あらかじめ予約の申し込みを入れました。参考までにお知らせしますが、連休期間中は申込者が多いので、早めに手続きをした方が良いそうですよ。




尋常じゃない海の青さだ

この橋をくぐれば八重干瀬だ
 さて、福岡から沖縄経由の飛行機を乗り継いで宮古島に到着。5月なのに気温は福岡の真夏と一緒。ほんの数時間前には、長袖シャツを着るほど肌寒かったことが信じられないです。そこいらに咲いているハイビスカスの花が、南国気分をいやがうえに盛り上げます。「よっしゃー来たどー! 明日はいよいよ八重干瀬だ!!」
 一夜明けてツアー当日はやや雲があるものの、おおむね晴れの天気。予約をしたツアーは、平良市の港から大きなクルーザータイプの船で八重干瀬に向かいます。それにしても春先の紫外線の多い日差しは、強烈なものがあります。そんな焦げるような暑さも、船の舳先近くにいると、潮風との調和で心地よく感じてくるものです。さらに船から海面を眺めていると、太陽が隠れたり姿を見せたり、また水深がある場所浅い場所と、刻々と変わる条件で海の色が目まぐるしく変わるのです。こんな万華鏡のような海は初めてです。八重干瀬到着前に、すでに宮古島へ来たことに満足した気分になりました。
 やがて宮古島と池間島を結ぶ池間大橋をくぐり、さらにコバルトブルーの絨毯の上を北上してゆくこと10数分。やおら船が減速しだしました。デッキから海中を覗き込むと、揺らめく海面越しに見える七色のサンゴが・・・やばい早く飛び込みたい。




ついに見た「幻の大陸」

果てしなく珊瑚が続く
 ついに到着した待望の八重干瀬。イメージではドーンと小島のようにサンゴ礁が海面に露出しているかと思ってましたが、今回はそれほど潮が引く時期ではなかったようで、海を見渡すとチョビチョビとサンゴの一部が波間に現れる程度でした。「幻の大陸」の姿を拝むことはできないのだろうか。少し残念な気持ちになりましたが、そんな気持ちは一瞬で吹き飛ぶことになりました。船長の許可が出て、吸い込まれるように水の中に入った時・・・・私の目の前には間違いなく「幻の大陸」は存在していたからです。

生き物の写真その1




深い海底へと誘うエダサンゴの林

海底まで光が注ぐ抜群の透明度
 水中で見る八重干瀬のサンゴ礁。まず私があまりの衝撃に呟いた言葉。それは「でかい!!」の一言です。サンゴの森・・・いやそれはまさに巨大な島としか言いようがないものでした。これが幻の大陸か。サンゴ礁の淵に沿って、ぐるっと泳いでいくとそれは確信となりました。青や紫のエダサンゴの林。それがダークブルーの闇の果てまで、深く深く続いている谷がそこにあったからです。その深い谷の上を漂っていると、上昇気流に乗って絶壁の上を滑空する”サシバ”になったかのような妄想にかられました。ちなみにサシバとは、宮古島の隣にある伊良部島のシンボルとなっている、鷹の仲間のことです。


生き物の写真その2




海底に眠る日本列島形成の証し

悠久の彼方に封印された歴史を感じました
 ところで宮古を含めた琉球の島々は、かつて地殻変動により大きくその姿を変えた時代がありました。もともとユーラシア大陸の一部であった日本は、徐々に分裂するかのように大陸から離れてゆきました。現在の日本列島の姿になるまでに、激しく繰り返された地殻の隆起と沈降。そのプロセスにおいて、八重干瀬のある一帯がかつては陸地として存在した時期があったのかもしれません。「幻の大陸」に想いをはせつつ目を閉じると、まぶたの裏に熱帯の魚が群れるサンゴ礁の光景が、チョウチョの舞うお花畑へと変化して幻想が浮かびました。
 さらにお昼の休憩を挟んで、場所を変えつつたっぷりと八重干瀬のシュノーケリングを満喫しました。最初はサンゴ礁が海上に出てないことを残念に思いました。しかし、むしろ水面ギリギリの状態で、差し込まれる太陽の光が受けたサンゴがキラキラ輝くこの潮の加減は、シュノーケラーにとっては最高でした。壁のように重なったサンゴに囲まれた水路のようなリーフを、魚になったつもりであっちこっちと泳いでまわりましたが、全く飽きることはありませんでした。どこまでも行っても八重干瀬のサンゴ群落は尽きることなく、そして生き物たちに満ち溢れていました。




最後まで夢心地を味わいました

白い砂浜が眩しい伊良部島「渡口の浜」もう一泳ぎしますか
 シュノーケリングを楽しんでいる途中で、水中メガネを外して海面に浮かんで休憩をしました。その時に、ふっと体の力が抜けてゆく不思議な感覚に包まれたのです。ウェットスーツを着ているので沈むことはないので、波間に漂いながら潮風が顔を撫でてゆく心地よさに身を任せていました。
 頭上には真っ青な空と眩しく輝く太陽があり、下には青い海に包まれた生命に満ち溢れるサンゴ礁があります。それらを体の全ての感覚で感じる時、自分は地球という大きな生命の中のほんのひとかけらであるということを認識しました。サンゴも魚もカニも微生物も、そして自分も含めたそれぞれの命が繋がり合って、地球という大きな命を生かしているのです。人間だけが自己満足のためだけに命を奪い合うこの世の中。それがいかに虚しいことであるかを、宮古の海が教えてくれた気がしました。