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海が呼ぶ 秋の山口


2005年10月29・30日


秋も深まりつつある頃にふむふむさんから「もう一回海に潜りに行きませんか?」という誘いがあった。夏に比べて秋の方が水中の透明度が高くて綺麗なのである。しかし当然ながら水温は低い。水の冷たさを知りつつも、生き物好きとしてはそういう誘いを断ることができないのがつらい。そこで今年はもう潜ることはないと思って、仕舞いかけていたウェットスーツを引っ張り出すのであった。
隊長と合流して、まずは新門司へと向かう。小倉の町を都市高速で移動していると、上空に大きな飛行船がのんびりと空中散歩をしていた。
いつもの新門司の波止場へ到着。ここではスナメリという小型のクジラが観察できるのだ。カメラ等を準備して、防波堤の先端に歩いて行こうとしていたら、なんと先ほどの巨大な飛行船が突如現れた。そしてすぐ近くの空き地に着陸をはじめた。
何かのトラブルか!? 慌てて着陸地点へと走る。しかしどうやら遊覧用の飛行船のようで、乗客を入れ替えた後、再び上空へとふわりと離陸していった。双眼鏡で覗きながら手を振ったら、それに答えて手を振り返していた人がチラっと見えた。機会があればぜひ乗ってみたいものだ。




さてスナメリ観察を始めるも、姿を現してくれない。隊長はこの場所で何度もスナメリを目撃しているのに、なぜか私が同行すると全く出てこないのだ。スナメリよ、そんなに嫌わなくてもいいじゃないか。同じ水辺の生き物同士ではないか。しかし望みは叶わず、ついにこの日もスナメリは現れることはなかったのである。




観察をあきらめて、隊長お薦めの「カボチャドキア国立美術館」へと向かった。門司港近くの味わい深い古い家並みの中に、その美術館はある。私は二度目の訪問だ。ギャラリーに足を踏み入れると、そこは細かく描きこまれた絵の中にある、カボチャドキアという不思議な空想世界の入口だ。幻想的な雰囲気の画風の中に、懐かしさを感じる町や店の看板が、そして賑やかな人々の生活感が描かれている。それはまさに貿易港として栄えていた頃の門司のイメージと重なる。
まったりとした空間にくつろいでいると、隊長の「ヘビの抜け殻があるよ」という声が。数日前に庭にあったのを、館の人が珍しがって拾っていたらしい。早速見せてもらうと、体長10cm程の小さなヘビの子供だった。しみじみ観察しながらデジカメでパシャパシャ撮影していたら館の人が、「どうぞ差し上げますよ」と言ってくれた。きっと展示作品そっちのけで、ニボシのようなヘビの抜け殻に夢中になっている人間を、ヘビ以上に珍しく思ったに違いない。




隊長が2時間ばかり下関の水族館で用事があるので、それが済むまで晩飯の買出しに行く。スーパーの横に釣具屋があったので、ついでに立ち寄る。釣り好きのふむふむさんが店主に「門司港で今から2、3時間釣りをしようとしたら、どんなのが釣れそうですか?」と質問した。すると店主「釣りするよりも、本を読んだ方がいいよ」だって。 もしもーし。商売する気ありますか?(笑)

その後、隊長と合流して今日のキャンプ地へと移動した。
下関と言えばやっぱりフグでしょう。唐戸市場で仕入れたフグを鍋にぶち込んでグツグツ。ひんやりと澄んだ空の下で、鍋をハフハフ・フーフーいいながら頬張る。じんわり体の内側から温まってきた。やっぱり肌寒いこの時期だからこそ、外で食べる鍋は格別だ。それに美味い焼酎があれば言うことなし。とっぷり夜が更けるまで宴は続いた。何時に寝たのかよく覚えていない。
翌朝はザーザーという雨音で目が覚める。そっと外を覗くと、かなり激しく降っている。「まじかよ・・・」と呟いて、仕方なくまた一眠り。二度寝から覚め、さっきの雨は夢であってくれと願う。残念ながら相変わらず雨は降り続いていた。しかし先ほどよりは雨雲は徐々に遠ざかりつつある。




皆で雨が上がるのを待っていると、早朝の魚釣りを終えた人がやってきた。そしてふむふむさん夫人に、ビニール袋を手渡す。うひょー!なんと釣りたてのサワラが入っている。予期せぬプレゼントに大喜びの一同。雨の憂鬱さも吹き飛ぶと同時に、絶妙なタイミングで晴れ間が広がってきた。今日もいい一日になりそうな予感がする。




山陰の海岸線を東に向かって走らせる。左手に広がる日本海は、どんよりとした雲に覆われていた。一応目的地は長門市の青海島にしているが、別に一同それにこだわりがある訳ではない。地図を見ていた隊長の「気になる川がある」の一言で急遽国道から右折した。
川に沿って進んで行くと、紅葉間近の山に囲まれた、静かな谷を見つけた。うららかな日差しを反射してきらめく川面のなんと美しいことか。これは一つ潜ってみますか。試しに水に手を入れてみて、即ギブアップ。潜ったら間違いなく二度と浮上してこれないだろう。これが夏だったら最高だろうな。




川でしばし遊んで、やはり当初の予定通り青海島に向かう。お昼も過ぎた頃、波の穏やかな仙崎湾に面したポイントに到着。まずは腹ごしらえの準備開始だ。バーベキューコンロを運んで炭を焚く。それから冷蔵庫から食材を取り出す。
炭に火がついたところで、隊長が本領発揮。タレが染み込んだジューシーな特製焼肉、ホイル焼き、朝もらったサワラもさっとさばいて火で炙る。そして「はい、どうぞ」といつの間にできたやらスープを渡された。なんと手際の良いことか。隊長との付き合いは結構長いが、本当にいろんな事ができる人なのである。




腹もふくれたことだし、それじゃお約束通り潜ってみますか。
水中メガネをつけて、そろりと水に入る。透明度は湾内にしてはかなりクリアだ。ふむふむさん夫婦が岩場で何かを見つけて盛り上がっていた。何を見ているか聞くと、岩に空いた穴の中からひょうきんな表情のコケギンポが顔を出していた。近くにエサになりそうな浮遊物が流れてきた時だけ、一瞬出てきてパクッとくわえる。そして素早くバックで穴に戻るのだ。そんな面白い姿をしばらく夢中になって撮影する。気付いたら体がすごく冷えてきたので、上がることにした。