出水平野にツルが舞う


2007年2月3日


たまに電車にすごく乗りたくなる時がある。通勤手段はバスで、仕事は外出することがほとんどない技術系の職種であるため、電車に乗る機会が本当に少ないのである。

2月3日は午後の予定が急になくなったので、思いつきで鹿児島の出水市に行ってみることにした。出水市は冬に羽を休める場所として数種類のツルが渡来する。今回は電車に乗って、それを観察しに行くことが目的だ。
JR博多駅より特急リレーツバメに乗る。音楽を聴きながら見る車窓の眺めは、風景のスライドショーを見ているようで楽しい。社内販売がやって来た。ビールとつまみを補給して、快適な電車の旅を満喫する。

途中、新八代駅で九州新幹線ツバメに乗り換える。初めての九州新幹線に感激してる間もなく、あっという間に出水駅に到着した。出水駅のデザインはもちろんツルが元になっている。赤い頭に白い羽を広げた姿が、いろいろな部分に表現されている。




冬季のみ駅前からツル観察のために、市内を循環する周遊バスが出ている。
1000円で何回でも乗り降りは自由だ。しかし次に出発する周遊バスを入れて、本日はあと2便しかない。となると途中下車せずにツル観察所で降りて、観察後に最終便で出水駅に戻ってこなければならないのだ。しかも観察所に滞在は1時間のみ。
ま、いっか。

バスが国道に入った。人家と田んぼのなんちゃない風景なのだが、そこに普通にツルがいるだけで何かすんごい! 地元の人は近くを通りかかっても、誰一人関心を示さないってのがまたすんごい。まるでハトやカラスと同じ扱いだ。こっちはバスの窓に顔をくっつけて興奮しているというのに。




ツル観察センターに到着。バスを降りると、鳴き声の大合唱が聞こえる。立ち入りを制限する黒い柵から見渡すと、ツルだらけ。 想像よりはるかに多い。 

平成18年12月23日の調査では、9割近くがナベヅルで、1割近くがマナヅル。他に数羽づつ クロヅル・カナダヅル・ナベクロヅルが確認できたらしい。だいぶ飛び去ってしまったというが、それでも数千羽は軽くいるに違いない。ひしめき合いすぎて、そこかしこで小競り合いが行われていた。




観察センター内の展望所から見下ろすと、ツル群の全体が見渡せた。しばし写真を撮影していると、突然群れが一斉に飛び上がった。それは突然のことで、思わず写真を撮るのを忘れてしまっていた。慌ててカメラを構える。そういえば先ほどネコを目撃していたので、もしかするとそいつが群れの中に乱入したのかもしれない。
「ツルの一声」という諺があるが、まさにその通りで一羽が号令の一声をあげると、それに従うように群れが一斉に行動するそうだ。観察センターに入らず柵のところにいたら、このツルの一声が聞こえたかもしれなかった。残念である。




夕日を浴びて一団がどこからか帰ってきた。そしてその群れはだんだん私の方へ向かってきた。




ほぼ頭上を一羽のナベヅルが、低空で飛び去っていった。羽を広げた姿を間近で見ると、結構大きい。1メートルは軽く越えていると思う。




あっという間に1時間が経過。周遊バスで駅に戻る頃には、空はうす暗くなっていた。バスから降りると、ちょうどオレンジ色の可愛い電車がホームに入ってきた。肥薩オレンジ鉄道・その名も「おれんじちゃん」だ。新幹線も良いけど、時間があったらこういう小さなローカル線でのんびり旅がしたい。そうだ今年は電車でいろいろ旅をしよう。春になったら桜や菜の花を揺らしながら、ゆっくり走るローカル線に乗りに行こう。